煮込まれた石

何でも怖い

 具合が悪くなってきた日の出も近い。

 吐き気がする。布団で眠らないのだからそうだろうなと思う。布団どころかろくに眠っていない。なぜなら私の家族は私の部屋の気密性を過大評価しておりなおかつエアコンをストーブか何かと勘違いしているためだ。私は恐ろしくて学術的な書物が読めない。おそらく独自能力はあるはずだし、ある程度なら内容理解もできようと思われるが、それでもまず手に取ることができない。文体への恐怖。しかし新書は内容に不安があり怖くて手に取れない。玉石混交だったらどうしよう。文芸書の玉石混交とはわけが違う。有害性の程度が段違い。新書に書かれていることはかなり事実寄りの印象だ。文芸書で石を引き当てたところで胸糞悪いとか、文章が気に食わないとか、退屈だとか、その程度の害しかなさないと思われるが、事実的なものを読もうという心づもりで新書を手に取りそれが石だった場合私はどうしたらいいのか。適切なことになっている教材ばかり与えられてきたと思いこんでいる身からすれば自身で良悪の判断を行うなんて面倒を通り越して恐怖でしかない。椅子の上でまどろんだりしようにも足が冷え切ってしまいできそうにない。その点、医学の教科書は尤もらしい気がする。医学部の図書館にある本ならおそらく選定を経ている気がする。第一私は医学生でも研修医でも医者でもない。だから間違えたらごめんなさいで済む。恥ずかしいだけだ。しかしもし、普通は間違えないような日常的な知識で虚偽の俗説を大真面目に信じ込んでしまったら……と思うと目も当てられない。そんな悲惨な失敗はしたくない。私はゴミだしゴミだし廃棄物だし目も当てられないクズだけれどなまじ高校の学科ではそこそこの成績をとるにいたったことができたせいで、それなりの私大の受験に合格してしまったせいで、というか暗記だけは人並みにできるせいで、それらを誇ってしまうせいで、間違えることが何より恐ろしいのだ。教科書の暗記は右から左なのでその心配はなかった。少なくとも試験においては形式的に正解があるのでそれさえ覚えていればなんの問題もない。それは間違いだと言われようと、あくまで私がしたことは覚えることだけなんて言い逃れもできよう。ああいやだ。